第3回書店員勉強会
新しいフェアの作り方を考えてみましょう
前回「やっぱりオリジナルのフェアのある書店の方が面白いよね」という話から
今回「では、新しいフェアの作り方を考えてみましょう」と同時に「30歳OVERに読んでほしい本も各々紹介してみましょう」という事で、7名の書店関係者が延々と語り合ってみました。
30歳OVERに読んでほしい本も各々紹介してみましょう
一粒で二度おいしい本を用意するフェア
トップバッター①の人は
「あなたが変わるまで、わたしはあきらめない」井村雅代 を紹介。大人として他人との接し方を説く本ながら、中学生くらいの子が読んでも自身のメンタルトレーニングとして有効な本とのこと。
つまり、狙ったメイン客層以外にもアピールできるような一粒で二度おいしい本を用意するフェア。
レベルの高い読書家書店員に挑戦してほしい高等テクニックです。
3つのフェアを同時に。 雑貨とか食器を合わせたフェア展開
お次②の人は、春だもの。30代だって何かに挑戦したくなるよね。だけど、いきなり難しいことやって毎度挫折するじゃん?だから、ちょっとハードル下げて始めようよ。という趣旨で、
「UD(ユニバーサルデザイン)レシピ本」旭川印刷製本工業協同組合 を紹介。
なるほど。これなら、日々忙しいなりにも何となく時間がある30代の「趣味としてのお料理」を始められるかも。そして、この本に合わせたいのが、防災レシピ本と登山食レシピ本。
これらの本の素晴らしい所は、日常使いもできる本として紹介もできるし「春 新生活向け」「防災」「登山」3つのフェアを同時に組めてしまうところ。つまり看板だけ変えれば…うっしっし…ずぼらな書店員の悪い笑みが思わず浮かんできます。
そして「自炊力~料理(レシピ)以前の食生活改善スキル」白央篤司 が他書店員によりすかさず紹介されました。(この辺の臨機応変っぷりはさすが)
「これに雑貨とか食器を合わせてフェア展開すれば良い」との談。なるほど、確かに。雑貨展開しているお店は是非もっと柔軟に「雑貨の隣に書籍を!書籍の隣に雑貨をしれっと展開!」にトライして頂きたいです。
「転生もの小説の系譜を探れ!何がド定番なんだ?オマージュフェア」
③の人が紹介するのは「リアルに疲れたら。。。30代だからこそ、ファンタジー」をテーマに
「ドラゴンの飼い方『もしも?』の図鑑」伊藤 慎吾←なぜか完全にドラゴンが飼える気がしてくる。
「日本国召喚」みのろう←一風変わった転生もの。日本という国が転生してみた件。
とても素敵なビブリオ一人勝ちバトルだった為みんなすっかり読みたくなったのですが、ここで考えたフェアが「転生もの小説の系譜を探れ!何がド定番なんだ?オマージュフェア」。一体だれが最初に異世界に行ったのか?あやかし系のパイオニアって何だ?色々諸説あって喧々諤々(けんけんがくがく)していたら立派なビブリオイベントに大発展しそうで、白熱必須なフェアになりそうでした。
そして、
「今のままでいいのか?」フェア
④の人は過去にやったフェアをご紹介。「今のままでいいのか?」フェア
悩み多き男性サラリーマンへ向けて「ひとりビスネスの教科書」佐藤 伝 などを展開し、なかなかの好感触だったとのこと。今は特に、やれ副業だ、やれ起業だ、と在宅ビジネスに熱い視線が注がれてますものね。人の心理をついた良いテーマのフェアだと思います。
「少年少女の恋愛感情に振り回されたい大人へ」フェア
⑤の人は「少年少女の恋愛感情に振り回されたい大人へ」フェア。
「オネスティ」石田衣良←切ない
「しろいろの街の、その骨の体温の」村田沙耶香←え?小学生なのに?
確かに日常的に感情が固くなってきた人にはこういう体験も良いかもしれないです。
じゃあ、これを更にもっと面白いフェアにするにはどうしたら良いか?
年齢で区切らず、目的ごとにしたらどうだろうか?
年の差、不倫、略奪 等々で分類分けしたフェア展開
おおっ!ググっと大人向けになって何やら妖しい感じが良くないですか?
など忌憚のないアイディア合戦が繰り広げられました。
「自分のやりたい場所を作る」フェア
⑥の人は「自分のやりたい場所を作る」フェア
何かを始める、自分の好きを伝えるに当たって、実際にその好きを伝える場所を作った人に焦点を当てた本。
「へろへろ」鹿子裕文←宅老所の作り方で元気が出てくる
「人が集まる「つなぎ場」のつくり方」ナカムラクニオ←ギャラリーやBOOKイベントなど集う場所をどう作るのか?
俊カフェ、ゲストハウス「わや」などビジネス<場所 という流れが目に見えて顕著になってきた昨今。時代に沿ったフェアだと思います。
禁断のフェア爆誕
途切れることのないトーク。
盛大に脱線した我々がついに覗いてしまった禁断のフェア。
その名も「ネタバレ フェア」が爆誕。
分類はあえて内容をガンガン見せていく方向で!
例えば、
ミステリーなら(トリック別。動機別。犯人別。なんなら死者数ランキング別)
恋愛なら(恋に落ちたページは123Pです!とか)
怪談・ホラーなら(怖がらせる得意技別。私、呪うのが得意です。俺は全身腐ってます。とか)
裏切りものなら(犯人妹でした。母でした。誰それでした等。関係性別 等)
食べ物ものなら(食材全部書き出しました)とか、盗んだもの別に分けましたとか。
まだまだ出てましたが、どれもすごく面白いまとめ方でワクワクです。
しかし、これ集計取るのに凄まじい手間と時間が掛かるので、こういうものこそ全国の書店員の力を集結させて情報を集め、みんなでオリジナルのフェアを作っていけたら相当面白いのにね♪という非常に前向きな気持ちになった壮大な妄想フェア構想でした。
気楽に選択肢の幅を広げられるような時間となるフェア
ここで⑦の人がぼそり。「30代って何か色々見えてしまって、それが逆に視野を狭めている感もありますよね。何か気楽に選択肢の幅を広げられるような時間となるフェアがしたい」
「みえるとかみえないとか」ヨシタケシンスケ
見えない・聞こえない・動かないとかはそれを日常にしている人にとっては、普通のこと。~ないことを気の毒がっても、実は~ない人から見たらまるで違う事を思われれているかもしれない、という視点の選択肢の拡大と、
一般人、軍人、博士、ファティマという名の機械であり女性であり女神、そして神々。
膨大な人数のキャラクターによる様々な視点・思いが一筋縄ではいかない混沌した世界観のなかで、何でもありが許容される解放感、という社会的立場としての多様性の拡大。
これらの本にプラスできるような選書を即座に出来るのが書店員集まりの醍醐味。
「迷い鳥たちの学校 居酒屋すずめ」桜井美奈
居酒屋の昼時間を使って開かれることになったフリースクールに集まる、さまざまな背景をもつ年齢も性別もバラバラな面々。様々な葛藤の先にある少しだけ前向きな明日を見せてくれるこの小説はきっと読む人の背中をそっと優しく押してくれる一冊になるはず。という素晴らしい即興プレゼンにより、かの書房推し先生の本が加わりました。
意外と何でもアリではないんです
広がる選択肢といえば…「フェア企画って書店員個人の遊び心や裁量権が案外フルに発揮されることが多いよね」という話で、実際に行なうフェアを念頭に置いての話し合い。
30代は何かと健康志向になってきたりするお年頃。
「中性脂肪、コレステロール、血糖値、高血圧、云々。これさえ読んでおけばOK!というフェアが欲しいんだけど」というご希望について、あれこれ議論してみましたが、結果は「書店員の専門的な医学的知識には疑問あり、下手にお勧めするのは却ってリスキー」との見解に。そうなんです。本屋さんのフェア、尖がったことをする前にちゃんと考えないと、なのです。そういう意味で意外と何でもアリではないんですよ。
フェアの展開期間
ところで、
フェアの展開期間としてはどの位を目安とするのが良いのでしょうか?
- 1か月では短すぎる。
- 2か月でようやく浸透?
- 6か月では長すぎる。
- 5か月でもやや飽きるかも。
そんな訳で3か月ぐらいが良いのでは?
という意見に一同納得。
雑誌ではどんなフェアが組めるだろうか
勢い付いた我々の話は書籍だけじゃなく、雑誌ではどんなフェアが組めるだろうか?にまで拡大。
無難なところではバックナンバーフェア。
あとは料理系雑誌で特集の食材別フェア。
季節ものでもアイディア次第で組めそうかも?
旅行先特集号集めました。今日はなんの日?でその特集雑誌を集める(2/22にひたすら猫雑誌)。等々。
雑誌のフェアについてはやや難易度は高いものの、ここは文殊の知恵をかき集めて今後も考えていきたいね、という訳で次回持ち越し。
という訳で、今回はフェアについて延々と語りあう会と相成りました。
雑談多く、寄り道脇道紆余曲折しつつも一貫して本について熱くポジティブに語り合える場所として、この書店員勉強会の色が出てきたように思います。
月1回。オフの日なのに思いっきり仕事の話を!
役職・枠組みを脱ぎ捨て、いち本に係わる人間として熱く1日を過ごしてみませんか?
次回以降、皆様のご参加をお待ちしております。